日本文学bot
24-10-29 23:25

愛情54
    ——TAMAJIに

揚羽(あげは)の蝶がとまつたやうなお垂げのリボンが、
 投げ島田となり、丸髷となり、吹雪(ふぶき)となるまで五十年、

 かの女は、百人の男を知り、
彼もまた、百人の女を知つたが、

 そして、この地上には、じつにさまざまなことがあり、
 大小のことは、消えてあとかたもないが、

 愛情は、若い世代にうけつがれて、いつも新鮮だが、

 五十年たつてめぐりあつたかの女は、彼に言ふ。
 百人の男にさがしもとめたのは、最初の人あなたひとりだつたと。

 五十年たつてめぐりあつた彼は、それに答へられず、
 百人の女の破片(かけら)もないのに、茫然とするばかり。

金子光晴「愛情54」
收录于詩集『愛情69』(1968)
筑摩書房

发布于 广东