愛情54
——TAMAJIに
揚羽(あげは)の蝶がとまつたやうなお垂げのリボンが、
投げ島田となり、丸髷となり、吹雪(ふぶき)となるまで五十年、
かの女は、百人の男を知り、
彼もまた、百人の女を知つたが、
そして、この地上には、じつにさまざまなことがあり、
大小のことは、消えてあとかたもないが、
愛情は、若い世代にうけつがれて、いつも新鮮だが、
五十年たつてめぐりあつたかの女は、彼に言ふ。
百人の男にさがしもとめたのは、最初の人あなたひとりだつたと。
五十年たつてめぐりあつた彼は、それに答へられず、
百人の女の破片(かけら)もないのに、茫然とするばかり。
金子光晴「愛情54」
收录于詩集『愛情69』(1968)
筑摩書房
发布于 广东
